SHUKA   HIRAGA

声明

 アートにおいて、作品それ自体は自立しておらず沈黙なる物体にすぎない。

人には生まれながら宿命の設計図が組み込まれている。
生存をかけた闘いを勝ち抜くために必要なありとあらゆるツールがそこには記されている。
ただし生存の意味するものは種の存続であり個のそれではない。
　何らかの力が働きひとたびスイッチが入ってしまうと我々は自身すら見たことが無い
暗黒に眠るツールを手にしてしまうことになるだろう。
　一方　ヒトは人間らしくあり続けようとし、また価値ある人生を見出そうと懸命に理想図を想い描く。
その理想図とインプットされている設計図を重ね合わせれば致命的なズレが生じている。
このズレこそが人間を悩ませ、混乱させ、絶望へと追いやる。

アートの定義はこのズレを埋める為の行為を指し、ヒトが人間であり続けようとする切なる願望の

可能性であり最後の領域である。

アートは死に向かう人を救済できる、宗教を除く最後の手段である。

アートは作家、作品と観る者の相互間に関係が生じ、かつ両者の自立によって成立し、
観る者の思考の産物として生み出されてくるべきものである。
自立は科学、哲学、宗教の理解無くして成しえることはできない。

沈黙なる物体をアートに変えるのは観る者の責務である。

平賀秀夏